もっと自分を出さないと:しょうこ(東京→シンガポール)

「最初は中間地点だと思って来たんだ」と話すのは、昨年シンガポールに移住したしょうこさん。最近結婚し、シンガポール人の夫と暮らしています。

プロフィール

名前: しょうこ 年齢:30歳

長野県出身。東京外国語大学在学中にインド、デリーで一年間インターンシッププログラムに参加。卒業後は大手金融機関、外資系IT企業で営業職を務める。2016年1月より東京オフィスからシンガポールオフィスに移動し、移住を実現。

しょうこ(敬称略):大学の時から、いつか海外に住みたいっていう気持ちはずっとあったんだ。28歳になった時「このままだとずっと日本にいてしまう」っていう危機感が生まれて。

安定した仕事があって、このまま働こうと思えば働けちゃう。でもこれって私が思い描いてた人生と違うなって。小さい頃から海外に憧れがあって英語ずっと勉強してきたし、このまま日本にずっと住むのは違うなって思った。それで30前に絶対海外行くって決めたの。今しかないって。

—————実際移住した時の心境はどうだった?

しょうこ:わくわくどきどき(笑)。でも正直、目の前の手続きで頭がいっぱいで、あまり何も考えてなかったかも。「とりあえず、行ってみたい!」っていう気持ちで実行に移したかな。

日本の荷物はだいたい全部捨てたよ。家具も、冬服もほとんど捨てたか、チャリティーに出した。「日本を去る、もう振り返らない」っていう気持ちだったから。シンガポールにはスーツケース一つで来たもん。

国際的で多様性がある環境

—————海外移住に期待してたことってどんなこと?

しょうこ: まずは国際的で多様性がある場所で働きたかった。自分が知らない世界で、色々なバックグラウンドを持つ人たちがいて、その中に身を置くことに憧れがあった。

同じ会社で海外に移動できれば一番だと思っていて、そうすると選択肢がシンガポールだけだった、っていうのがここを選んだ理由ではある(笑)。でも色々なバックグラウンドの人がいるのは、まさに期待通りだったよ。

—————働き方の違いはどう?

しょうこ:「働き過ぎない」っていうのはあるかな。アメリカの会社だからアメリカのビジネス文化が軸だとは思うし、シンガポールで一概に言えるかはわからないけどね。自分が言われたこと以外やらない。「自分のやるべき範囲以外はやらない」っていう。

日本では「もう一歩踏み込んで工夫する」意識が常にあった。でもこっちは関係ないことは一切やらない。日本人の価値観からすると「え、それでいいの」と思われることもあると思う。線引きがはっきりしてる分、効率は良いけどね。

シンガポールの恋愛、結婚事情

—————職場以外だと、どんな場所で新しい人と会うの?

しょうこ:シンガポールはミートアップが盛んでいろんなグループがあるから、写真とかボルダリングとか、最初の頃はいくつか参加したよ。最近結婚したんだけど、そのシンガポール人の彼と出会ったのはボルダリングのミートアップなんだ。

ミートアップには地元の人もたくさん参加してる。シンガポールの人は常に自分磨きしたり、新しい事に挑戦したり、アクティブで勤勉だと思うよ。

—————シンガポールの恋愛事情っていうか…みんなパートナーとどうやって出会ってるの?

しょうこ:私の周りの地元の人は、大学時代に出会った相手と長く付き合って30歳手前くらいで結婚することが多いみたい。職場はあまり聞かないな。あとTinder使ってる人もすごく多い。

あと政府が少子化対策で出会いサイトを作ってて、そこにも政府が関与してるんだっていう驚きはあった。バリバリ働きたい女性も多くて、あまり結婚願望がない人も多いみたいだけどね。

みんな働くのが好きで、専業主婦願望を持つ女性は少ないと思う。結婚しても共働きじゃないとやっていけないっていうのはあるけど。専業主婦の人は日本人以外で知らないな。

メイドさんがいるのは普通だから、家のことはメイドさんに任せて。あと、時短で働く人もいるけど、それで白い目で見られることは全くない。

日本にいたら考えないこと

—————日本人コミュニティとの関わりってある?

しょうこ:全然ない。日本人と会うことはあるけど、日本人会には入ってないよ。

—————「日本人会に入る」っていうのがあるんだね。

しょうこ:そうそう、入会金が10万円くらいかかる。日本人会の中にバトミントンクラブとかいろんなクラブがあって、ちょっと興味あったんだけど、調べてみたら入会金が高かったからやめた(笑)。

日本人コミュニティは大きくて、日本人は確か4万人近く住んでるよ。そしてそのコミュニティ内だけで過ごす人はすごく多い。他の国の人から「日本人って日本人同士でしかつるまないよね」って言われることもあるよ。

—————移住してから自分が変わったと思う部分ってある?

しょうこ:「自分をもっと出さなきゃ」と思うようになった。こっちはみんな自己主張が強いから、自分の好き嫌いをもっとはっきり言わないとって。インドにいた時も、これはすごく思った。日本にいたら考えないことだな。

仕事もプライベートもみんなはっきり言うよ。いろんな民族がいるから、自分の意見をちゃんと主張しないといけない文化が育ったんだなと思う。

まだ出しきれてない部分もあるけど、仕事の仕方は変わったかも。私は営業で電話をかけるんだけど、こっちでは「買うんですか、買わないんですか」みたいな感じ(笑)。直球だよ。

もちろん商品を買う場合はサポートするんだけど、買わないってわかってる場合はお互い時間の無駄だから「オンラインに情報あるんで、そちらご覧下さい。じゃ、さよなら」って。効率は良いよね。

シングリッシュに戸惑う

—————シングリッシュはどう?

しょうこ:全然違うよ。アクセントが中国語みたい。先週日本のチームが来ていて一緒にご飯食べに行ったんだけど、ウェイトレスが話していた言葉をチームのみんなは中国語だと思ってた(笑)。私も来たばかりの時は中国語だと思ったんだよね。今は、リスニングはだいぶ鍛えられた。

シングリッシュは、文末にラーとかローとかが付く他に、文法が想定外なの。She doesがShe doになって、Where are you going がwhere you goに、What are you doing がWhat you doになる。

—————学校でその文法を教えているわけではない?

しょうこ:教えてないの!みんな書き言葉も仕事での英語もすごくきちんとしてるんだけど、日常会話になると変わる。私も時々シングリッシュ話すんだ。勉強中だよ。

給料の20%は自動的に年金に

—————移住してみて期待と違った部分ってあった?

しょうこ:特にないんだけど、あえて言うならあんまり自由がない印象があるかな。政府がコントロールしてる部分がすごく大きいんだ、良くも悪くも。

—————例えばどんなこと?

しょうこ:まず、国が発行する個人のIDがあって、なんでも全部IDで管理されるの。日本の個人番号みたいな感じ。役所とかだけじゃなくて、例えばジムの入会でも何でもそのIDで登録する。超管理社会だよ。すごく上手くできてる。

あとは例えば、中央管理年金制度。シンガポール人と永住権保持者は、毎月の給料の20%は自動的に引かれて年金として積み立てられるの。年金の使い道は限定されてて、医療費か、シンガポール国内で不動産を買う時だけにしか使えないんだよね。

—————じゃあ、元気なら物件買うしかないってことか。

しょうこ:そう。それがあるからシンガポール人の95%は国内で不動産を買うんだって。自由は利かないよね、積み立てが強制だから。自営業でも引かれるよ。

国内での不動産購入がほぼ必須だから、シンガポールの人は家のローンとかで国内にいないといけない意識がある。だから人生が見えやすいっていうかね。

—————フリーターも年金引かれるの?

しょうこ:それが、フリーターがいないんだよね。ニートとかも本当にいなくて、就業率が驚くほど高い。こっちは生活保護がない上に医療費も高いから、何かしら働かないと生きていけない。

水を飲んで叱られる

—————あとは、小さいことだけどガムが食べられないんだっけ。

しょうこ:うん、持ち込み禁止だね。街を綺麗にするという目的で。あと駅構内での飲食は一切禁止。自販機も一切ない。一回水を飲もうとして怒られた。あと写真撮ろうとしたのも怒られた(笑)。

他にも放置自転車の罰金500ドル、違法駐車の罰金1000ドルとか、罰金が桁違いに高い。だから、もうみんな悪いことをしない。うまく機能してる。

—————シンガポールの人はどう思ってるんだろうね。

しょうこ:シンガポールの人は全然反発しないし、むしろ自分の国をすごく誇りに思っていると思う。安全だしね。旅好きで海外旅行はいろいろ行くけど「結局はシンガポールが一番いいよね」っていう印象だよ。

「あれ、今どこにいるんだっけ?」

—————移住してから東京に対して印象変わったことはある?

しょうこ:東京は駅ごといろんな文化があって楽しいなって。同じ東京の中でも高円寺とか銀座とか、街の雰囲気も、人も違うし面白いなと思うよ。

シンガポールはどの駅に行っても大体同じ。街のデザインも似てるし、どこ行ってもこのショッピングモールにこのお店がある、みたいなね。「あれ、今どこにいるんだっけ?」ってわからなくなる。だから東京みたいに「この街に行く」っていう感覚はないな。

—————そっか、多文化だけど街自体は結構均質な感じなんだ。

しょうこ:そうそう、チャイナタウンとか、インド人街はもちろん違うんだけど、それ以外はそんなに変わらない。シンガポール人の中には「私は西派」「私は東側が好き」っていうのがあるんだけど、私にとってはそこまで変わらないかな。

シンガポール独自の文化がないから、そこに対する物足りなさは感じるよ。50年の若い国で、何にもないところから育った国だから。シンガポール人のアイデンティティはきっと日本人と違う感覚なのかなと思ったりするよ。

経済発展を目標にしてきた国だから、考えてることも経済とか成長が根付いてるっていうか、感覚が違う。みんな「国=発展」ていうマインドセットがある気がする。勉強も小さいうちからすごくシステマチックにやるみたいだし、すごく学歴社会。みんな「一番になりたい」って、すごく意識が高い。

—————また移住したいと思う?

しょうこ:日本に戻るのも良いけど、また別の環境に住みたいとも思う。シンガポールは働くには良い場所だと思って来たけど、最初来た時には中間地点だと思ってたんだ。腰を据えて住むなら別の場所かなって。

でも結婚して、今は彼の仕事の都合もあるからまだわからないね。彼もいつか、欧米に行けるチャンスがあればって言ってたかな