メディア関連で働くみなみさんは仕事がら転勤が多く、日本国内での転居経験が豊富。そしてこの4月に息子とともに夫の住むジャカルタに移住しました。みなみさん自身は1年後に帰国予定ですが、延長の可能性もあると話します。
プロフィール
名前:みなみ(ニックネーム) 年齢:30代前半
石川県出身。大学在学中にシンガポールに1年間留学。卒業後はメディア関連企業に勤務する。2017年4月より休職しジャカルタに移住。夫と小学生の長男と生活する。
移住のきっかけ
—————みなみさんの移住経験見るとノマドだよね。
みなみ(敬称略):そうね。会社の事情だから自主的に引っ越しているわけでははないけど、転居は当たり前だと思って社会人生活を始めたから抵抗はないよ。
—————ジャカルタ移住は何がきっかけ?
みなみ:夫が去年からジャカルタに単身赴任していて、今回私が1年休職して子供と一緒に引っ越したんだ。
私の会社に「配偶者海外転勤同行制度」という制度があって、最長2年まで休職できるの。今のところ1年の予定だけど、まだ考え中。
世界有数の渋滞都市ジャカルタ。日曜の市内中心部のカーフリーデー。ドラえもん(?)の着ぐるみは、一緒に写真を撮ってお金を取る商売をしている
移住して変わったこと
—————移住してから生活ってどう変わった?
みなみ: 生活のリズムがすごく変わった。子供を初めて間近で見ていると思うよ。
日本にいた時は仕事であまり家にいられなかったから、今まで知らなかったやばい面もいっぱい見えてきて、逆に良い面もいっぱい見えてきた。子供がこうしたことで笑うとか、喜ぶとか。すごく新鮮だよ。家族ともっと時間を過ごすことが、こっちに来た理由でもあったんだよね。
—————移住前に期待していたことってどんなこと?
みなみ:インドネシアはなじみがない国だったから、もう一度新しい言葉でコミュニケーションできるとか、新しい価値観に触れられるとか、すごく楽しみだったよ。宗教的にも文化的にも興味あったし。
—————インドネシアでは何語で話している?
みなみ:インドネシア語が公用語で、英語はあまり通じない。だからインドネシア語の勉強は必然でもあって、買い物の時とかは片言で「これいくらですか」とか「クレジットカード使えますか」とか話しているよ。
「外国人扱い」がないジャカルタ
—————ジャカルタでは外国人って特別な存在? 扱いが違うと感じることはある?
みなみ:ないない!日本人はお金を持っているイメージがあるから、状況によっては売り込もうとする人はいるかもしれないけど。
でもそれ以外の人はインドネシア語で普通に話しかけてくるよ。ネイティブのスピードで。日本人だからどうっていうこともないし、外国人に対して恥ずかしがることもない。
————そういう時、みなみさんはどうするの?
みなみ:わかる時は答えるけど、わからない時は「言ってる事わかんない」って言う(笑)。その後は、英語の片言で話そうとする人もいるし、「じゃあいいや」って離れていく人もいる。相手の言うことがわからなくても拒まないようにしているよ。「聞くよ」という姿勢でいる。
ジャカルタ中心部
子供との移住で不安だったこと
—————移住前に不安だったことってある?
みなみ:衛生環境と育児環境だね。一番心配だったのは医療と食べ物。
まず食べ物がどこまで安全なのかわからなかった。農薬面で、普通のスーパーに売っているものを子供に食べさせて大丈夫かとかね。あとは大気汚染や治安の関係で気軽に外で遊べないと聞いていたから、肉体的に子供が衰えないか心配だったな。
—————実際に住んでみて、不安は解消できた?
みなみ:どれも十分ではないけど解消できているよ。値段は高いけどオーガニックの食品もあるし。医療も食事も、お金さえ払えば手に入る環境ではある。負担は大きいけどね。
おおらかに、ストレスなく
—————移住後、自分自身の変化って感じる?
みなみ:いろいろとおおらかになったかな。
まず時間。日本では忙しくて周りのスピードも速いから、もっと余裕がなかったと思う。でもこっちに来てから時間におおらかというか、むしろルーズになったかな(笑)。
あとは、ジャカルタでは子供が騒いでもみんなすごく優しいんだよね。日本では公共の場だと白い目で見られるじゃん。そうした子供に対する寛容さも影響を受けたかな。
私が問題だと思ったことでも、ここではみんな「オーケー、オーケー」と言ってくれるから自然とおおらかになった。それでも人間生きていけるし、その方がストレスがないと思ったよ。
「日本人の価値観」を見直せた
みなみ:こっちに来てから、日本で育って良かったっていう実感も生まれたんだけどね。具体的に説明が難しいんだけど、例えばものを大事にするとか、出汁の味がわかるとか、要所要所でよかったと思う。
前は日本人の価値観がコンプレックスだったんだよね。「やたら人に気をつかう」とか「生真面目」といいう。でも気を使うから相手に嫌な思いをさせないし、真面目さがあるから色々と物事を習得していくし、そういう良さに気づけた。
こっちに来ても、日本人の人が食べた後だと食器が重ねてあったりしてさ。「あ、こういうのいいな」「こういうの好きだな」と思ったんだ。
私は私で日本人でいいし、こっちの価値観もそれでいい。多様性を肯定できるようになったのかもね。俯瞰で見られるようになった。それは収穫だったと思う。
移住先でのコミュニティ作り
—————みなみさんは現地の友達はできた?
みなみ:いない、いない。こっちでコミュニティを築くのが下半期の目標だよ。それで、9月から大学のコースを申し込んだんだ。
このままだと日本人にしか会わないまま終わってしまうから、これはもったいないと思って。大学の留学生向けインドネシア語コースに通うことにしたよ。先生は現地の人だし、日本語を勉強している学生に接触の機会もあるみたい。
どれだけ繋がりが生まれるかは未知数だけど、まずは今の固定化されたコミュニティから一歩外に出ようかなと。来てしばらくは孤独を癒すのに精一杯だったんだけど、余裕が出てきたかな。
—————故郷の一番恋しいものって何?
みなみ:周りの人だよ。ものとかはあまりない。人以外は適応できる。
移住は変化。「捨てる」感覚はない
—————移住する時は諦めなくてはいけないこともあるかと思うけど、どのように優先順位をつけている?
みなみ:移住する時に、選ぶとか捨てるという感覚はないな。
選択というよりも変化として捉えているよ。同じ場所に住んでいても、変化は常にあるよね。変わらないものなんてないし、自分の価値観も、子供が大きくなることも。
だから移住で人間関係が変わることも、違うキャリアプランになることも、より良くなるための変化のひとつだと思ってる。物事変わらない方が面白くないし、成長もないしね。
—————みなみさんにとっては、移住が自然なことなんだね。
みなみ:でも、そんなこともないよ。変化の中で結果は全部自分で受けなきゃいけないから悩むところもある。全て思い通りに行くわけではないし、嫌なこともいっぱいある。
—————今まで一番大変だったことは?
みなみ:今までの仕事や人間関係と離れてしまうから、新たに自分の居心地が良いものを見つけるのが大変。それが一番辛いことかな。生活パターンとか、ものとかでもね。それをみんな模索している気がする。
—————また移住したい?
みなみ:したいね!知らない料理食べて、いろんな人と喋って、「ああこんな人たちもいるんだ」って感じられるのは楽しいからね。

イラスト:大石香織(Kaori Oish

