そんなに外人じゃないって:ヘレン(四川→天津→東京)

ヘレンさんは2015年に天津から東京に移住。大学院でデザインを学ぶため来日し、現在は東京でウェブデザイナーとして働いています。インタビューの中でよく出てきたのが日本のルールやマナーの話題。化粧、服装、会社、トイレの使い方まで、様々な気づきを共有してくれました。

プロフィール

名前:ヘレン 年齢:25歳

中国・四川省出身。天津の大学に進学し、在学中4か月間スペインに留学。大学を卒業後、2015年4月に慶応大学大学院に入学。2017年に修士号を取得し、卒業後は都内のデザイン会社に勤務する。

来日の背景

—————四川省はどんなところ? 

ヘレン:中国での四川のイメージは、みんな自由であまり真剣ではない感じ(笑)。いつも笑っているとか冗談言っているとか。あと歩くスピードが四川人は少し遅い。他の大都市はみんな忙しいから歩くのが早いけど。

私が天津にいた時は、みんなの歩くスピードに付いていくのが大変だった。 

—————大学が天津だったんだよね。

ヘレン:うん。大学では英語を専攻してた。天津がある中国の北部は、人の印象が全体的に強い感じがする。四川や中国の南の方の人はゆっくりで優しい感じ。

—————日本で大学院に行こうと思った理由は? 

ヘレン:昔からアートやデザインに興味があって、日本のデザインは綺麗だし想像力に溢れててずっと大好きだった。それで日本の大学院でデザインに関する専攻があったから、行ってみようかなって。

私の両親はずっと私に通訳になって欲しいと思っていた。だからそれを目指して英語を勉強してきたけど、通訳として働こうとする前に自分が本当に興味があることを勉強してみたいと思った。それでもし将来の道が変わるなら、それも良いと思って。

もしデザインが仕事にならなくても、日本に留学すれば日本語ができるようになって、通訳としての幅も広がると思った。

—————すばらしいね、それで今デザインの仕事をしているもんね。

ヘレン:そうだね、実際に道が変わった。

—————日本に来る前に日本語は勉強していた?

ヘレン:ううん。大学院が始まってからも日本語の授業は多くなくて、1週間に4時間ぐらい。 働き始めてからは会社で毎日日本語を使うから、今は少しできるようになったかな。

慶応大学大学院にて。

日本の生活で期待していたこと

—————日本に来る前に期待していたことはある?

ヘレン:あるある、たくさんあるよ。まずは食べ物!寿司とかラーメンとか日本料理は大好きだったから、本場で食べられるのはすごく楽しみだった。

あとは街自体にとても期待してたよ。街のデザインとか、標識とか、ユーザーフレンドリーなんだろうなと思って。 

—————実際に来てみてどうだった?

ヘレン:食べ物はやっぱり美味しいね。日本に来てから太った、ちょっとだけね。でも美味しいから良いんだ。あと日本ではラーメンと餃子とご飯を一緒に食べるのとかすごい面白い。中国では絶対にないなって。

街自体もとても好きになったよ。想像と違う部分もあったけど。例えば、地下鉄のプラットホームの線路側に壁が作られてない駅もたくさんあるとか、思ったより少し古く感じた。日本は中国より前にインフラが作られたから、そう感じるんだと思う。 

来日前に不安だったこと

—————日本に来る前不安だったことは?

ヘレン:まず日本語。全然できなかったから。日本では思ったより英語が使えなかった。区役所でも買い物でも、どこでも日本語が必要だったから最初は大変だった。今ではだいたい大丈夫になったよ。 

—————海外から来た知り合いには「東京は英語だけで大丈夫」と言う人も結構いるけど。

ヘレン:その人は多分、西洋の見た目の人かな?私はアジア人だから英語を使うと「どうしてアジア人なのに英語を使うの」と見られるイメージがある。みんな日本語を話すことを期待してる気がする。

前のインタビューでマルセルが「外人」として振る舞う、ということを話していたけれど、アジア人は「外人として振る舞う」ことはできない。「あなたはそんなに『外人』じゃない」っていう感じで。

面白いよね。でもこれは私にとってはいいことだと思う。チャレンジできるから。

あとは、言語だけでなく文化的にもコミュニケーションがうまくできるか不安だった。日本人は「自分が考えてることを言わない」とか「細かい」というステレオタイプがあったから、うまくコミュニケーションできるかなって。中国では細かいことをあまり気にしないから。

  
東京でのイルミネーション散歩中に

—————実際はどう?コミュニケーションの方法を変えた部分はある? 

ヘレン:私のコミュニケーションの仕方はそのまま、結局何も変わってない。思ったのは、個人の性格次第だということ。日本人だから、中国人だから、じゃない。

例えば、私は中国人だから「皆私が嫌いかな」という考えもあった。でもそんなことなかったよ。日本では中国に関する報道があまり良くないし、中国でもそれは知られている。中国でも同じで、日本に対して良くないイメージの報道はある。

でも私が信じているのは、人と会う時には、国ではなくてその人自身を見ることが大事ということ。日本の人もステレオタイプではなく個人として付き合いをしていると思う。

 

 

日本のルール、マナーが大変

—————日本に移住して大変だったことは?

 

ヘレン:日本に来てびっくりしたのは、女性がみんな化粧をしていること。

私は23歳まで中国にいて、全然化粧してこなかった。日本ではルールになってる感じがする。しなかったらマスクをするとか。でも中国は全然そうじゃないし、なかなか慣れない。

どうしてみんな化粧するの?

 

—————しない人もいるけれど、マナーだと考える人は多いかもしれない。

 

ヘレン:日本ではみんな自分の顔とか服とか、イメージをすごく気にしてて、ちょっと不自由な感じはする。学校でも靴とか靴下までユニフォームがあるとか、就職活動用の服とかも。厳しいと思う。

あと面白いなって思ったのは、今の会社ではトイレットペーパーを使った後に必ず三角形にしなければいけないルールがある。あと、中国では出社時間が9時だったら9時5分に行っても大丈夫だけど、日本は8時45分に行かないとダメとか。なかなか難しいね。

でもその厳しいマナーが身につくと、海外に行く時にも問題が起きにくいんじゃないかと思う。自分でマナーを守れるから。だから良いことだと思う。

 

 

東京のお気に入りスポットで

日本の経験でほかの国でも

—————日本に来てから自分が変わったと思う?

 

ヘレン:すごく変わったと思う。今は自分の振る舞いとか、どう見られるかがすごく気になるようになった。前は全く考えたことなかった。

日本の人は本当に言いたい事は直接言わないと思う。衝突したくないから。だから、マナーや決まりを守るように自分で注意しなきゃだめだと思うようになった。

悪いことではないけど、必要ないことまで考えてしまう時がある。

 

—————故郷のことで恋しいことはある?

 

ヘレン:もちろん家族は恋しいけど、あとは食べ物。四川料理も恋しいし、普通の中華料理でも味付けが違ったり、なかなか日本で好きな場所が見つからない。中国語も恋しいな。最近は中国語を使う機会が2週間に1回ぐらいしかないから。

あと恋しいのは、化粧をしなくてもいいということかな。でもね、今も一週間に一回くらいは化粧しないの。その時はすごく「自由だ」って感じて嬉しい。

 

—————また移住したいと思う?

 

ヘレン:したいね。いろんな国に行ってみたい。言葉が最初は出来なくても、日本の経験があるからやっていけると思う。いつかはわからないけどね。今はもっと日本を知りたいと思ってるよ。